参考までに、2015年(1月1日から適用)の主な相続税改正事項は次のとおりである。
- 基礎控除
- 遺産に係る基礎控除が改正前の60%に引き下げられた。
- 税率構造
- 最高税率の引き上げなど税率構造が変わった。
- 税額控除
- 未成年者控除や障害者控除の控除額が引き上げられた。
- 小規模宅地等の特例
- 特例の適用対象となる宅地等の面積等が変わった。
- 事業承継税制
- 適用要件の緩和や手続きの簡素化等が行われた(本解説では割愛)。
また、本相続税の解説を新規公開(2015年4月16日)した以降は、次の改正事項にも対応している。
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2018年から適用の相続税法の改正
- 小規模宅地等の特例
- 特定居住用宅地等の家なき子特例及び貸付事業用宅地等の適用要件がより厳しくなった(4月1日から適用)。
- 地積規模の大きな宅地
- 宅地の評価に於いて「地積規模の大きな宅地」(規模格差補正率)が新設され、これに伴い「広大地」が廃止となる(1月1日から適用)。
- 調整率表
- 宅地の評価で使用する「調整率表」の一部の値が変更になる(1月1日から適用)。
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2019年1月1日から適用される「土砂災害特別警戒区域内にある宅地」(特別警戒区域補正率)について対応。
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2019年~2020年に掛けて適用される相続法の改正。なお、この改正で新設された「配偶者居住権」に対し評価方法にも対応。
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複利現価率を求める時に使用する法定利率について、第2期(2023年4月1日から2026年3月31日)の利率をツールチップ上に追加。
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2023年4月1日から適用の特別受益・寄与分の期間制限について対応。
なお、本解説で使用されている語句の意味は、下表のとおりである。
いりゅうぶん 遺留分 |
法定相続人が法律上確保されている最低限の相続できる割合のことであり、遺言が存在する場合に効力を持つ。 法定相続人と遺留分の関係は、次のとおり。
また、各法定相続人の遺留分は、「全体の遺留分 × 各自の法定相続分」となる。 なお、遺言の内容が遺留分を侵害するものでも、その遺言書は法的には有効である。しかし、侵害された法定相続人が、家庭裁判所に異議を申立てれば、遺留分を相続できる(異議を申立てなければ、遺留分を相続できず)。 |
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だいしゅうそうぞく 代襲相続 |
被相続人の死亡前に相続人が死亡している場合、その相続人に代わって相続することを言う。代襲相続が適用されるのは、相続人(被代襲者)が子供または兄弟姉妹の場合のみである。 相続人が子供になる場合は、相続発生前に子供が死亡していれば孫が、更に孫が死亡していればひ孫と言うように、どこまでも下の代が代襲して相続(再代襲相続)する。一方、相続人が兄弟姉妹になる場合は、相続発生前に兄弟姉妹が死亡していれば、同様に甥・姪が代襲して相続するが1代限りで、更に甥・姪が死亡していても、その下の代が代襲して相続することはできない。 代襲相続人の相続分は、被代襲者(代襲される者)の相続分と同じであり、代襲者(代襲する者)が複数いる場合は、被代襲者の相続分を等分する。また、相続人が相続放棄をした場合には、初めから相続人ではなかったとみなされ、代襲相続は行われない。 なお、直系尊属は代襲相続がなく、相続人の父母のどちらか一方が相続発生前に死亡していても、死亡している側の祖父母は代襲相続できない。ただ、相続発生前に父母の両者が死亡していれば祖父母が、更に祖父母の全員が死亡していれば曾祖父母がと言うように、どこまでも上の代が相続できる。 |
ちょっけいそんぞく 直系尊属 |
「直系」とは、血族関係に於いて父祖から子孫へと一直線につながる系統を言う。 「尊属」とは、父母・祖父母・曾祖父母・叔父・叔母など自分よりも前の世代にある者を言う。 従って、「直系尊属」とは、血族関係に於いて一直線につながっている系統の中で、自分より前の世代を言い、父母・祖父母などが該当する。配偶者の父母・祖父母は、直系でないので該当しない。 なお、養子や養父母は、血の繋がりがないものの、法定血族なので(法律上血縁があるとみなされるので)、養父母は直系尊属となる。 |
ちょっけいひぞく 直系卑属 |
「卑属」とは、子・孫・曾孫・甥・姪など自分よりも後の世代を言う(「直系」の意味は、上記参照)。従って、「直系卑属」とは、血族関係に於いて一直線につながっている系統の中で、自分より後の世代を言い、子・孫・曾孫などが該当する。 なお、養子や養父母は、血の繋がりがないののの、法定血族なので(法律上血縁があるとみなされるので)、養子は直系卑属となる。 |
にわりかさん 2割加算 |
被相続人の一親等の血族及び配偶者でない相続人は、各人の課税価格から算出した相続税額にその相続税額の2割を加算する。これを「相続税額の2割加算」と言う。 相続税額の2割加算の対象となる人は、主に次のとおり。
なお、代襲相続により孫が法定相続人になる場合は、あくまで子供として相続していることになり2割加算の対象でない。一方、遺贈により代襲相続人でない孫が財産を受け継ぐ場合は、二親等なので2割加算の対象となる。 また、相続税を算出する上で2割加算を行うタイミングは、あくまで各人の課税価格から算出した相続税額に対してであり、税額控除後でないので注意されたし。 |
はいぐうしゃ 配偶者 |
法律上婚姻関係にある男女の一方から見た相手方を指す。つまり、「夫」の配偶者は「妻」、「妻」の配偶者は「夫」である。法律上婚姻関係にない事実婚の場合は、相手方を配偶者と言わない。 |
ひかぜいざいさん 非課税財産 |
相続により受け継いだ財産であっても、次のものは相続税が掛からなく、「非課税財産」と言う。
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ひちゃくしゅつし 非嫡出子 |
法律上婚姻関係にない男女の間に生まれた子供を言う。ちなみに、法律上婚姻関係にある男女の間に生まれた子供を「嫡出子」と言う。 |
そうぞくざいさん みなし相続財産 |
死亡保険金や死亡退職金等は、被相続人が生前所有していた財産でないが、相続により受け継いだとみなされ、相続税が掛かることから「みなし相続財産」と言う。 なお、相続人が受取った死亡保険金や死亡退職金等の一定額に対しては、相続税が掛からない「非課税財産」になる。 参考までに、マイナス財産がプラスの財産より明らかに多いため死亡保険金の受取人が相続放棄した場合、マイナス財産の支払いを免れるだけでなく、死亡保険金は受取人の固有の財産なので別途死亡保険金を受け取ることができる。また、死亡退職金に関しては、受給権者が内規で定められていれば、受給権者が相続放棄しても死亡退職金を受け取ることができるようである。 |